第25回 3D教育研究会

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ご挨拶

日頃より、株式会社 KA 教育の教育活動にご協力を頂き誠にありがとうございます。 この度『第 25 回 3D 教育研究会』を開催することが出来ました。 『生徒と社会をつなげる教育』と題し、ドルトン東京学園中等部・高等部参事の安居長敏 先生による講演が行われました。開催時のレポートを作成致しましたので是非とも周囲 の先生方へご回覧頂ければ幸いです。
21 世紀を担う生徒達にとって、『3D 教育プログラム』が、少しでもお役に立てればと願う次第でございます。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

令和元年 8 月吉日
株式会社 KA 教育
代表取締役 菊地 淳

第 1 部「 講 演 会 」

会長挨拶

3D教育研究会 会長 片倉 敦先生(順天中学校・高等学校 副校長)

皆さんこんにちは。
梅雨空の中、お越しいただき本当に有り難うございます。 本日は新しい学校作りと言いますか、これから 21 世紀型の教育をどのように行 うべきかというヒントになるような話をドルトン東京学園の安居長敏先生より講 演を行っていただきます。これから先、どのような生徒を育てていくべきかという ことが曖昧な中で、改革だけが叫ばれているという状況でもありますので、方向性 をある程度はっきりさせておくべきではないのかと考えております。これから生徒と社会を結びつけていく教育、知識だけではなく現場での実践的な教育を目指すのか。また、その為にはど のように意欲や感心を結びつけていくのか。ということが今後重視されていきますので、そういった部分も聞 いてみたいと思っております。
本日は宜しくお願いいたします。

【プロフィール】

ドルトン東京学園中等部・高等部 参事(副校長補佐) 安居 長敏先生

1982 年:滋賀女子高等学校(22 〜 24 歳)
2002 年:エフエムひこね開局(43 歳)
2003 年:パソコンサポート起業(44 歳)
2005 年:FMひがしおうみ開局(46 歳)
2006 年:滋賀学園中学・高等学校(47 歳)
2013 年:同/高等学校校長(54 歳)
2015 年:同/中学・高等学校校長(56 歳)
2017 年:アミークス国際学園/学園長・校長(58 歳)
2019 年:ドルトン東京学園/副校長補佐(60 歳)

講演『生徒と社会をつなげる教育』

皆さんこんにちは。
本日は先生方のマインドを変えるということが基本的な主旨となります。3 校の学校の紹介をし、最後に 現在のドルトンの紹介をさせていただきます。

冒頭ではプロジェクタースクリーンを使用し、画像に沿ったクイズが行われました。
どこに目がいきますか?

大多数の人が右下の欠けた部分に目が行くと思います。しかし子どもたちに聞くと真ん中のくっついた部分 に目が行く子もいたりもします。ただ、どうしても人間は足りない部分や欠けている部分を脳が修正するよう な仕組みがあるそうです。

世界地図を思い浮かべてください。

我々きっと日本を中心とした地図が思い浮かぶと思います。でも世界には色んな国があり、色んな地図があります。

これらは今までに我々が学び得た知識で、自分なりにこうだと決めている方向性に基づくものです。しかし、 それが良い場面ばかりではなく、実は日々暮らしていると自分の身体にどんどん鎧のように付いていっては 無いですか?ということです。 結論としては、そうなっては駄目ですよね?というのが今日の落としどころです。 学校では満点のテストがあります。1 問間違えると減点、間違えたらどんどん満点から引かれていきます。 しかし社会に出て世の中では満点ってあるでしょうか?仕事に置いてココまでで良いという限界はありま せん。そういった世の中なのに学校では何故満点というような限界を置くのでしょうか。それっておかしく ありませんか?

我々はバリバリの 20 世紀型の人間です。否定から入る人は 20 世紀型の人間なのです。今日の話が終わった 後、皆さんには 21 世紀型の人間になっていただきたいので否定せずに「出来る・大丈夫・大成功」というよう な 3Dになって欲しいと思います。

諸外国の学生と比較した場合、日本の学生は全体的にポジティブさに欠けているというデータがあります。 こんな日本で良いのでしょうか?日本も根本を変えていかなければということを色んなところで盛んに言われています。
では、どういう部分を変えていくのか。

今後、AI参入の時代に子どもたちが将来様々な職業に就きたいと言った場合に、我々はどのようなアドバイスをしてあげれるのか。AIがどんどん進むと次にAIの世の中という新たなステージが来るのではなく、毎日のようにどんどん状況が変わるような世の中が来ると考えた方が良いでしょう。次の時代がどうなるのかではなく、次の時代はますます分からなくなっていくと思わないと駄目なのです。

②滋賀学園で繋がった社会と人

特に偏差値の高い学校ではなかったのですが、子どもたちのモチベーションをどのようにして上げていくか と考えていた時に、やはり先生の意識を変えていかなければと思いました。 先生が教えるということをやめ、テストの成績だけで子どもを測ることをやめるということです。

滋賀学園の学び

Real Life:生活に密着した勉強
Street Smart:町中を歩きながら様々な経験 Lifelong:勉強は一生のモノ

この学校では、先生は知識を与えず、学び方の種を蒔くということを実践しました。

弱い部分を無理して何とかするよりも、得意な強い部分をどんどん伸ばせというような考え方です。 また、学校だけではなく、地域や企業にも協力してもらい実践しました。

2015 年にHPというPCメーカーとご縁があり、ICTのハード整備を肩代わりして貰うことが出来ました。新たにHP製のタブレットを無償で導入し、特進クラスに配布しました。アクティブラーニングを行う上で、立教大学の先生や学生に協力してもらい、BLP(ビジネスリーダーシッププログラム)=企業と一緒にビジネスの課題を解決するという学習も行いました。
また、市役所の方に来てもらい、市の人口動態についての話をしていただきました。そこでは学生の色々なアイデアを市長にプレゼンするということも行いました。
学生からは普段の学習よりも楽しい、何故ならば自分が行っていることが人の役にたっているということを 思うとやりがいがあるということでした。

2016年度入学式「ワク熱! 安居教室」

この学校で何が言いたかったかというと、学校の先生が学校ではない場所に手を伸ばせば 10 人に 1 人くらいは必ず掴んでくれる人がいます。学校はオープンなので、何かを一緒にやりたいという人は現れるということです。1 つ行うことで、それがさざ波のように他の企業や地域の方にも伝わるのです。

③アミークスでのチャレンジ

9 年前にできた英語教育の特例校です。日本では珍しい感じの特徴的な学校で半数が外国の先生であり、カナダ 人やオーストラリア人など様々でした。

小学校では国語以外は全て英語による授業。中学校になると高校入試も考慮し、数学と理科だけは日本語で 教える補習学習(サプリの時間)を作り、入試に備えるという感じで行いました。

「学びのシステム」

一条校ですので日本の教科書も使わないとなりません。小学校で啓林館の教科書を使用してたのですが、問題 集はシンガポールのものを取り入れました。 算数の授業を英語で行うメリットは算数と英語が同時に身につくということです。算数の中身も日本の教え方 と外国の教え方が異なるということも含め身につきます。

例えば「3 + 4 = 7」ということをあなたはどのように説明しますか?というプロジェクトに対して、色々な角度 から描くのか?どのようにまとめるのか?どのように表現して伝えるか?ということを実践しました。また、 必ず最後に発表するということを行いました。

英語の場合は、カナダ・オンタリオ州のカリキュラムがベースとなります。

・6 分野の課題設定

「地理・自然」「健康・環境」「旅行・環境」「日本・沖縄」 「テクノロジー・サイエンス」「ジャーナリズム・メディア」

・体験学習も交え、他教科とも連携し、4 〜 6 週間かけて探究 ・その課程で、英語 5 つのスキルを身につける

話す・聞く・読む・書く・メディアリテラシー 英語を学ぶのではなく英語で学ぶことにより、自然に英語が身につきます。

④今こそ必要なチカラ

世の中には様々な人がいますが、やはりレベル 4 の人になって欲しいと思うのです。

LV.4:アイデアを実行に移し、周りに価値をもたらす人
LV.3:アイデアを出せるが「こうしたらいいのに」しか言えない人
LV.2:課題を見つけるが、文句だけしか言えない人
LV.1:言われたことだけをやる人
LV.0:言われたことすらやらない人

「学校だし、やってはダメですよ」ということは封印してください。「学校だからこそ、やっていいですよ」と言葉の表現を変えたほうが良いと思います。例えば世の中ではスマホの時代に「学校ではスマホ禁止」ではな く、学校だからこそ使って良いと考えます。世の中で失敗するよりも学校で失敗した方が良いのです。何か あった場合学校の責任になるという声もありますが、それを学ぶ為に学校はあるのだと思います。

“取り組むべきは正解のない「問い」”

今後、未知の世界になっていく上で、「どうすれば良い?」か誰も分からないわけです。たくさん失敗するから 良いというマインドへ変えていったほうが良いと考えます。

ドルトンが実現したいこと=いつでも どこでも 誰とでも 学べる空間

我々がドルトンで実現しようとしていることは、

・学びの主役はあなた、先生方は全力で応援します。
・個性を大きく伸ばし、思いやりを大切にします。
・深い学びを、どんどん楽しくやりましょう。
・いろいろな人がいて、いろいろな意見があって、お互いを尊重できる世界人になりましょう。

ということです。

これから備えておきたい資質とは、

  • 基礎力(言語運用能力.数理・ICT)
  • 問題解決力(答えを導き出す力)
  • 組織的行動力(当事者意識)
  • 自己実現力(探究心・自己管理)

今、学校を含めた教育というものが変化しているということを、我々はもっと真剣に捉える必要があると思い ます。 ICT等も含めた上でこれまでの考え方の先生方に対しては、本当にこのままで良いのですか?と絶対に問わな ければなりません。これまで通り決められた通りにやらなければ、という考えももちろん否定はしませんが、 半歩外れてみよう、一歩進んでみよう、チャレンジしてみよう、冒険してみよう、といったアクションを起こし 続けないと未来の学校にはなりませんし、教育改革には乗っていけないのではないかと考えます。

大人というのはどうしても自分の歩んできた常識にいつも縛られています。その考えはもうやめる時期です。 それは自分の歩んできた過去のことですし、そのような常識が未来に通用するわけがありません。子どもに対 して良かれと思い発した一言が、子どもの希望の芽を摘むことになりかねませんので、子どもと一緒に学び、 成長するということを考えたほうが良いと思います。

かっこいい大人とは

「かっこいい大人とは?」ということを考える時に「人生で、一番後悔していることはなんですか?」というこ とを想像すれば思い浮かぶでしょう。

  • 掴まなかったチャンス
  • 言わなかったこと
  • 追いかけなかった夢

これを裏返しにマインドを変えていくことで、今すぐにでも「かっこいい大人」になれるでしょう。このような 困難を楽しむことが人生なのではないかと思います。

最後になりますが、自分が沖縄に行ったのも、沖縄からドルトンへ来たのも、このポスターを見て決断をしました。航空会社(ANA)の 60 周年のポスターに刻まれている言葉です。

何もしなければ何も起きない。
行かなければそれはやってこない。
飛びださなければ世界は変わらない。
すべてのひとの心に翼はある。
使うか、使わないか。
世界は待っている。
飛ぶか、飛ばないか。
海をこえよう。
言葉をこえよう。
昨日をこえよう。
空を飛ぼう。

自分が何かをしようと思っても、やらなければ何も起きません。
目の前の物事、出来事は自分が一歩を踏み出すことによって起きます。
行きたかったら、行かないと何も掴めません。
飛び出して行かないと、世界は変わりません。
自分に翼があるのなら、使いましょう。
ということです。

これを最後のメッセージとして、本日の講演を終わりたいと思います。 長時間ありがとうございました。

質疑応答

アサイメントということで定期テストが無いということですが、各教科での評価方法はルーブリック的 にしっかりと押さえられているのでしょうか?

片倉 敦先生(順天中学校・高等学校)

A

各教科で評価の体形はあります。ただ、各教科であまりにもアンバランスだったりもしますので、それを 教科間で調整したり意見交換をするようにしています。これは先生方同士の意志疎通がなければ難しい と思います。 入学して最初に描いていた子どもたちの力と実際の力の差はあるので、今はまだそれを教科間で調整 している段階です。


新しい学校なので若い先生方が多いかと思いますが、今後、学年が中学〜高校と揃っていくにつれて 先生方も増えていくと思います。例えば年配の先生の場合、なかなかついて行くのが難しいシステム なのではと感じますが、どのようにお考えでしょうか。

樋口 元先生(京華女子中学校・高等学校)

A

今の段階では他の学校から転籍をされた中堅の年代の教員が多いです。今後は若い先生を育てられるよ うなある程度の経験を持った先生を入れていくべきだと思います。また、新卒の若い先生はドルトンの 学びを柔軟に吸収してやっていけるような人を採用したいと考えています。


長男が小学 6 年ということもあり、ドルトン進学も考えにあったのですが、塾の方からはまだ結果が出て ない学校なので・・等アドバイスを受けてしまいました。新しい学校で中身の見えない部分もありましたが、実際に生徒さんはどのような感じでしょうか。

二俣潤也先生(京華女子中学校・高等学校)

A

4 月に入学してから 2 カ月半ほど様子を見てると、伸び伸びし過ぎている印象です。そもそもルール が無いですから。何か起こった際にも先生は「駄目」という言い方をするのではなく、「周りの子はどう 思う?」というような疑問系の言い方をします。ルールで縛るのではなく、どうすれば周りの皆が心地よ く学べるかということを身体で感じ、自分の行動を変えるということなのです。ですので時間はかかり ますが。新しいことを始めた時の良さと反面、それを具体的に進めていく時の恐さもあります。実績のな いこのような指導で大丈夫なのか、テストの点数は上がるのかと。しかし現段階では、ドルトンの求めて いることとは、新しい時代の子どもが学ぶ場だということを保護者や子どもとも対話することが大事な のかなと思います。


自分の学校でもタブレット端末による学習を行っているのですが、それによってどうしてもSNS等の問 題も被ってきます。私自身もSNSやタブレット端末がこの先無くなるとは思ってなく、学校の中で使い 方を覚えていくべきだと考えています。先程の話の中で、ルールが無いですとか失敗して学ぶべきだと いう話もありましたが、SNSで失敗した場合、取り返しのつかないようなことになるのでは?とも考え ています。そのような場合においてどのように学習させ、対処していくべきでしょうか。

深瀬 航先生(目黒日本大学中学校・高等学校)

A

本校でもこのような案件も授業で行っています。本校では一切フィルーターをかけずにフルアクセスの Wi-Fiを共有しています。例えば昼休みにYouTubeを見ている生徒もおります。内容によっては、それが プラスにもなるしマイナスにもなりますので、それを見た教員が「それはあなたにとって良いと思いま すか?」のような問いかけはします。確かに怖い場面も想定できますので、それを見かけた教員が問いか けをするようにしています。だからといってこのサイトはNGみたいなことは今のところ行っていません。 ルールで縛ることよりも個々を自覚させることが大切だと思っています。


講演後は同学園入試広報室長の髙野淳一先生より、ドルトン東京学園開校の 準備段階から立ち上げ〜これまで 2 カ月半の解説、紹介がありました。

PHOTO REPORT

参加者全員での記念撮影