朋優学院高等学校では、生徒一人ひとりの個性や心理的傾向を把握するために、年に2回「実践エゴグラム」を実施しています。これは、生徒との関係づくりや進路指導の質を高めるうえで非常に有効な手段であり、20年以上にわたって継続して活用しています。
エゴグラム診断は、人間の心を5つに分解し、それぞれの強さやバランスを視覚化する心理テストです。具体的には、「厳しさ(CP)」「優しさ(NP)」「論理性(A)」「自由さ(FC)」「順応性(AC)」といった観点から、個々の傾向を数値化・グラフ化します。診断を通して得られた結果は、生徒自身の自己理解を深めるだけでなく、教員が生徒の特性を客観的に把握し、より良い関係を築くための材料となります。
年2回の診断で見えてくる変化と個性

診断の実施時期は4月と11月です。4月は新年度のスタート時期であり、新しい環境での生徒の心理状態や人間関係の傾向を早期に把握することで、担任や学年団がスムーズにサポートを行うことができます。一方、11月は4月の診断で見えた課題がどのように変化したか見ています。
エゴグラム診断は、担任の直感だけに頼らず、生徒の内面をデータとして“見える化”することで、進路指導でも大きな力を発揮します。本人の特性を踏まえたアドバイスやフィードバックがより具体的かつ納得感のあるものになります。
クラスや学年の特性を活かした指導へ
診断結果は個人だけでなく、クラスや学年全体の傾向を見る手がかりにもなります。ある学年では「論理性(A)」の高い生徒が多く、課題解決型の活動に意欲的に取り組んでいたり、別の学年では「感情の豊かさ(FC)」や「優しさ(NP)」が際立っており、グループ活動や表現の場で高いパフォーマンスを発揮したりといった具合に、集団の特性も見えてきます。
こうした情報は、学年経営や行事の設計にも役立ちます。たとえば、あるクラスが「自由さ(FC)」に富んでいる傾向があれば、生徒主体で進めるプロジェクト型学習を積極的に導入するなど、指導方針を柔軟に調整することも可能です。

保護者と共に取り組む「心の教育」
本校では毎年、KA教育の菊地代表を招いて保護者の皆様を対象にしたエゴグラム診断の体験会・解説会も実施しています。これは、生徒の診断結果の内容を一方的に伝えるのではなく、保護者の方ご自身にもエゴグラム診断を体験していただき、その意義や読み取り方を実感してもらうことを目的としています。
体験会では、実際に簡易版のエゴグラム診断を行い、ご自身の結果に照らし合わせながら、子どもたちの診断結果を見る視点を学んでいただきます。また、各自我状態がどのような意味を持ち、どのように教育や家庭での声かけに活かせるかについても丁寧に解説していただきます。
参加された保護者の方々からは、「子どもの特性を客観的に理解できた」「これまでの接し方を見直すきっかけになった」といった声が寄せられ、家庭と学校が一体となって子どもを支える土台づくりにつながっています。
生徒の心を見つめ、未来を支えるために
エゴグラム診断は、いわば“生徒の心の地図”のような存在です。成績や進路希望調査だけでは見えてこない、生徒一人ひとりの考え方や感じ方に焦点を当てることで、より丁寧で本質的な進路指導が可能になります。学校と家庭が連携しながら、子どもたちの個性に寄り添い、それぞれの未来を共に描いていく。そのためのひとつの手段として、これからもエゴグラム診断を大切に活用していきたいと考えています。
